公益財団法人  数学オリンピック財団



第46回2005年 国際数学オリンピック(IMO)メキシコ大会


◆参加報告

第46回国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad = IMO)は7月11日から19日までメキシコのメリダで開催された。 参加各国の団長達は一足早く7月8日にメリダ入りして大会の準備に務めた。 11日には選手団が次々と到着、翌12日に開会式が行われた。 入場行進の折、日本選手6名は、けん玉を披露して満場の拍手喝采を受けた。 コンテストは13日、14日に大きな会場で全員一緒に行われた。 17日にはハリケーンが上陸するというハプニングがあり、30名ぐらいが一緒に宿泊することになり国際交流にプラスとなった。 日本選手はみんな精一杯頑張り、総合成績が昨年と同じ8位(過去最高位)、個人は金メダル3、銀メダル1、銅メダル2であった。 金メダル3個は、今までで最多の獲得数である。

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メダル 氏名 所属校 学年
栗林 司 筑波大学付属駒場高等学校 高3
片岡 俊基 三重県高田高等学校 高1
渡部 正樹 筑波大学付属駒場高等学校 高2
三谷 明範 筑波大学付属駒場高等学校 高3
中村 勇哉 筑波大学付属駒場高等学校 高2
副島 真 筑波大学付属駒場中学校 中2


◆選手達の声

栗林 司
 僕にとって2度目の、そして最後のIMOでした。 去年のギリシャ大会は、初めての海外旅行かつ初めてのIMOだったので、とても刺激的でした。 ですから今年もぜひ行きたいと思っていたし、代表に確定してからはとても楽しみにしていました。 開会式で91カ国が次々と入場しているのを見て、「あぁ、今年もIMOにきたんだなぁ」という感じがしました。 日本チームは入場のとき、けん玉パフォーマンスをしました。 試験は念願の金メダルをとることができました。 満点というおまけつきでした。 まさかこんな点はとれると思っていなかったのですごくうれしいですが、まだあまり実感がわきません。 日本の順位も去年に引き続き8位と好成績でいいことばかりでした。 その後は3日間の観光等が行われました。 ピラミッドや天文台を見たり遺跡を登ったりとマヤ文明のすばらしさ(特に2進法と正確な暦)を体感しました。 ハリケーンが直撃したために夜はホテルのホールみたいなところに避難してそこで夜を明かすというとても楽しい出来事がありました。 最終日は、ハリケーンのために表彰式の会場が変更になり、パーティがなくなったのは残念でしたがホテルを出発する朝の4時半までいろいろな国と交流しました。 中1のときから5年間、毎年数学オリンピックを受け続けてきたのでこれで卒業だとなんだか寂しいような気もしますが、 これからは(できたら)チューター側で数学オリンピックをお手伝いしたいと思っています。

片岡 俊基
 今回は2回目の参加であり、去年はつまらない勘違いで金メダルを逃してしまったこともあり、 「今年こそ金」と気合を入れて試験に臨んだ。1日目:第1問が解けずに焦った。 第2問が簡単だったので2問より1問が簡単と思ったら1問が解けた。 十分に時間が余ったので第3問はバンチで解けた。 2日目:第4問は難しそうだったが実験したら分かった。 第6問は見ための難しさの割には一本道、第5問は初等幾何で残りの時間を粘ったらできた。 と結果的には満点をとることができた。個人の名刺の裏に共円の問題を印刷し50枚ぐらい配ったが、 その問題のもとになったゲーム「共円」を韓国とベトナムのチームに広めた。 また、アメリカチームがやっていたn人同時ソリティア(nは正整数、n=1のとき通常のルール)のようなゲームに飛び入り参加した。 名前とメールアドレスを教えたとき、名前の漢字の意味を聞かれて困ったこともあった。 日本の選手が泊まったホテルはメキシコ国内で5つ星とされているにもかかわらず衛生管理が不十分だったり、 ダウンタウンで子供や老人が物乞いをしたりしているのを見て、日本の裕福さを感じました。

渡部 正樹
 今回は初めてのIMOというだけでなく初めての海外行きだった。 試験の結果については日本を出る前というか、試験を受ける前までは4問位解けるかなと思っていたのですが実際には5問も解けて金メダルを獲得できた。 第6問目が解けたことが嬉しかった。 他のチームとの交流においては開会式のために持ってきていた多数のけん玉が非常に役立った。 日本を出発する前には自分のコミュニケーション能力や英語力のなさで、 ろくに交流できないのではないかと微妙に心配していたがいろいろな交流ができて安心した。 楽しい旅行ができてよかった。

三谷 明範
 国内選考が接戦だっただけにそれなりにプレッシャーがあったのだけれど、初日、二日目ともに2問完全に解けて予想以上に良い成績が残せてよかった。 銀きたし。わーい。心残りなのは、両日とも比較的早い時間に2完できた後そのことに安心してしまって、残りの1問を解ききれなかったこと。 今考えると不可能な問いではなかったので、最後の数オリ系の試験なのだし、解きたかった。 交流は、どうも英語を母国語とする人よりも、自分とあまり会話力のレベルがかわらないくらいのアジア系の人々との方が話しやすい。 そんな片言の英語(それでも相手は結構話せるのだけれど)でも、ある程度意思疎通ができたのはそこそこ嬉しかったけれど、 やっぱりネイティブと対等にやりあえるくらい話せたらいいのに。 最後に、IMO2005を支えてくれた人々や日本の関係者の方々、本当にありがとうございました。

中村 勇哉
 IMO以外で100ヶ国近い国の人が集まり交流する機会はないのではないか。 僕はとても貴重な体験ができたと思う。交流をしようとして感じたことは、第1に日本人の社交性のなさだった。 自由な時間があると日本人たちだけで集まって話をしたり、部屋に閉じこもってしまうことがほとんどだった。 交流を図ろうと思ってもどのように切り出していいのか分からず苦労した。 第2に日本人の英語力の貧困さを感じた。 英語が母国語の人たちに比べて劣るのは当然ですが、英語を外国語として学んだ人たちに比べても大きな差を感じた。 このような状況で一番役に立ったのは6人全員が持ってきていたけん玉だった。 けん玉をやっているとそれを見に多くの人が集まってくれる。 そして集まった人にけん玉を教えることで交流を図ることができた。 特に印象的だったのは、けん玉が日本チームの誰よりも好きで僕たちが「けんだマニア」と呼んだ韓国チームの人だ。 彼とは数学の問題を出し合ったり、ボートゲームをしたりした。 最後に、僕がIMOに参加することができたのは、両親、そして支えてくれたすべてのIMO関係者のおかげです。 ありがとうございます。Gracias!

副島 真
 乗り継ぎのアメリカヒューストン空港では荷物検査が厳しく、鉛筆削りも武器にされてしまう。 メリダに到着して部屋に入ろうとすると中から人が出てきた。 ホテルが間違えていて、2人部屋に4人入れてしまったようだ。 日本人が2人、外国人が2人だったので国際交流となった。 コンテストについては18得点で銅メダルだった。 観光は3日間で5ヶ所に行きました。 3日目はChichen Itzaに行き、ピラミッドに登ったが45°以上なので登りも下りも立って歩けない。 登りは4本足が可能だが下りは危険なので次の2つで降りる。 ①1番上の段にすわる。②上からk番目の段にすわったら、k+1番目の段にすわる。 ハリケーンは日本の台風より強く、外に出ることが禁止された。 部屋は窓が飛んでくる危険があるので食堂で寝た。 食堂にはチップスを持っていった。チップスには黄、赤、緑があり赤チップスは思ったより辛くなくすっぱい。 これはおみやげになる。最終日には、閉会式で壇上で走り回ったり跳んだりして楽しみました。


◆団長達の声

団長  近藤 宏樹
 メリダでは毎日日本の真夏と同じような暑さが続いていた。 今回は選手側も宿泊先がホテルであったこともあり、食事も含め比較的快適に過ごせたように思う。 コーディネーションでは開催国側のコーディネータが非常によく準備していたこともあり、おおむね順調に予定をこなせた。 ハリケーンで一時心配な時期があったことを除くと、選手たちにとって満足できる大会になったのではないだろうか。

副団長  河村 彰星
 第46回IMOメキシコ大会に副団長として参加しました。 我々同行者は選手たちの答案を、開催国委員に説明し、1点でも多い得点を勝ち取る「採点折衝」が主な仕事です。 観光プログラムでは白壁の建築が並ぶメリダの中心街や周辺の町のマヤ文明遺跡を訪れました。 日本の選手たちは遺跡には目もくれず数学の話ばかりしているので、同行したテレビ取材の女性ディレクターは、 「あの子達って本当に数学が好きなのね」と半ば呆れ顔でした。 ま、興味は人それぞれですからね。 またある時など、外国選手と話していた選手が突然こちらを向いて、「河村さん、等脚台形って英語で何て言うんですか」と、聞いたりします。 数学が共通話題なのでしょう。

コーディネータ  今井 直毅
 メキシコは会議室のクーラーが非常にきいている国だった。 また初日に配られたプログラムに「ボトルに入った水以外は飲んではいけない」と書いてあったのだが、 それに従わず会議室においてあった飲み水を飲んだところお腹を壊してしまった。 このようなところで我々を試すとはメキシコもなかなかやるなと思った。 コーディネーションに関しては、僕は英語が聞き取れず話せずで非常に苦労したが、 何とか全てこちらの希望通りの点数を取れたので安心した。 僕のコーディネーションの大半の時間はK君の答案に使われたような気がする。 とにもかくにも、今年の日本チームは非常に満足できる成績を残せたと思います。 最後に、僕にこのような機会を与えてくださった財団の方々ありがとうございました。 また今回IMOに参加して改めて自分の英語力の無さを痛感しました。 自分が生徒の頃から毎年同じことを感じ続けていますが。進歩が無いですね。



◆国際順位 (参加国91カ国、513名)
順位
中国
アメリカ
ロシア
イラン
韓国
ルーマニア
台湾
日本
ハンガリー・ウクライナ
11 ブルガリア
12 ドイツ
13 英国
14 シンガポール
15 ベトナム
16 チェコ
17 香港
18 ベラルーシ
19 カナダ
20 スロバキア

開催国の Web Site は、下記の通りです。

https://erdos.fciencias.unam.mx/imo2005/index.htm


◆参加者の写真


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左から、副島、三谷、片岡、
栗林、渡部、中村の各選手

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コンテスト会場にて 韓国チームとの交流風景
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左から河村副団長、
近藤団長、今井コーディネータ