公益財団法人  数学オリンピック財団



第47回2006年 国際数学オリンピック(IMO)スロベニア大会


◆参加報告

第47回国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad = IMO)は 7月10日から 18日までスロベニアのリュブリャナで開催された。
参加各国の団長達は一足早く 7月6日にスロベニア入りして大会の準備に務めた。 10日には選手団が次々と到着、翌11日に開会式が行われた。 入場行進の折、日本選手6名は、はっぴ姿で相撲を披露して満場の拍手喝采を受けた。 コンテストは12日、13日に大きな会場で全員一緒に行われた。 天候にも恵まれ、コンテスト後は、選手たちは観光の中で国際交流に努めた。 日本選手はみんな精一杯頑張り、総合成績は過去最高位の7位、個人は金メダル2、銀メダル3、銅メダル1であった。

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日本代表選手の成績
メダル 氏名 所属校 学年
大橋 祐太 筑波大学附属駒場高等学校 高3
渡部 正樹 筑波大学附属駒場高等学校 高3
伊藤 佑樹 灘高等学校 高3
片岡 俊基 三重県高田高等学校 高2
吉田 雄紀 灘高等学校 高2
越川 皓永 筑波大学附属駒場高等学校 高2


◆選手達の声

大橋 祐太
 IMOの代表選手になれてとても嬉しかった。 出かける前は、IMOも海外旅行も初めてでとても緊張していましたが始まるとあつという間でした。 イチローの剛速球のようです。スロベニアはとても自然が美しくドミトリーのいたるところにたくさんの虫がいました。 ベッドは2段ベッドなのに柵が無くとても爽快でした。 こんな美しい大自然を目の前にして、僕は「共円!」と叫ばずにはいられません。 外国人との交流はとても楽しかった。 歩いている女の人の前で「Happy Birthday!!」と言いながら数十人で女性を取り囲み、 その中の一人が誕生日だという設定で女性にキスを強要する団体を見ると、やはり日本は小さいなと思いました。 また、部屋で日本人が「アーツ」と合唱するとクウエート人が部屋から「ウオーツ」とレスポンスをくれるので顔を見ないままとてもエキサイティングな通信対戦が楽しめました。
 また、英会話は、とても鍛えられました。 海外で過ごすうちに、難しい単語や文法は一切必要なく、ただ「oh」の音色を使い分けるだけでよいことに気づきました。
 最後に試験についてですが、金メダルが取れたのは本当にうれしいです。 また、日本が過去最高の7位を取れたこともとても嬉しいです。 今回のIMOは本当に楽しいことばかりでした。 僕はもう高3なので来年のIMOに参加できませんが、今後の後輩たちの活躍に期待しています。

渡部 正樹
 スロベニアについてまず感じたのは独特のにおいである。 おそらく森のにおいでしょう。 着いたのが夜の9時ごろだったが星空が日本に比べ非常に綺麗でした。 T.K君が「三重県レベルじゃん」といっていました。
 「呪われていそうな場所」の実物を始めて目撃しました。 A棟の地下にある楽器室のひとつで壁にやばい感じのシミがついています。 このシミが赤かったら完璧だったでしょう。 他にも呪われていそうな廊下、ベッド(高所に配置されているのに柵が無く、今にも人が落下して怪死を遂げそう)呪われていそうな部屋(3人中2人風邪)とか様々な呪われていそうスポットがあり、 さすがおとぎの国。
 日本選手団のテンションが割りとすさまじかったが他国にもおかしい人々がいました。 己の雄たけびのみで日本人4人もクエートとの国際雄たけび合戦に引きずり込んだ彼は天才としか言いようがありません。 スロベニアの人々も燃えていました。 閉会式での「イーイッヒッヒー」で彼らが何を伝えたかったかは未だに謎のままです。 他にもいろいろありましたが、IMOは楽しい行事です。三年後ぐらいにObserver Aで行けることを楽しみにしています。

伊藤 佑樹
 スロベニアは、日本のような場所で、屋根が赤いのを除けばまるで長野でした。 宿泊所は選手間で収容所と呼ばれ、食事がまともだったこと、スポーツがしやすかったことは素晴らしかったが、 落ちやすいベッド、蒸し風呂のような夜は、コンテスタントを減らす目論見かと恐怖を覚えました。 各国の人と楽しい交流が出来ました。 相手が出したカードを戻し平然と自分のカードを出すイタリア人、 奇声に応戦するクエート人など凄い人たちばかりでした。 サッカー大会がありました。PKを外して負けました。 そして試験では解ける5番を落とし銀でした。残念です。 IMOの企画者と他の代表に感謝します。

片岡 俊基
 試験:銀でした。
 スロベニアの自然:あまりに日本(例えば長野)だった。(除−鍾乳洞)
 スロベニアの文化:ハイジと見せ掛けユーモアがある人々だった。
 日本選手団:あまりにも適用できる場面が多かった。ノリがよかった。集合時刻を守ってなかった。
 イタリア選手団:ワールドカップ効果でノリがよかった。
 クウエート選手団:スポーツ(含コンピュータゲーム)が強く叫んだら叫び返してくれる人々。
 エルサルバドル選手団:ガブリエルと再会して、多くの土産を交換してきた。
 台湾選手の一人:なぜかグラフを知っていた。四則教えた。
 マカオ選手団:サッカーゲームにはまっていたようだ。
 ベルギー選手団:共円(試合の方)に熱中していた。
 バングラディッシュ選手団:国旗が似ているおかげで仲良くなれた。共円を教えた。サッカーが日本より強かった。
 アイルランド選手団:四則を教えた。
 最後になりましたが、IMOを支えてくださった皆様、有難うございました。

吉田 雄紀
 スロベニアは自然豊かな国で、面積は三重の数倍ほどです。 あまり日本には知られていませんが、自然に恵まれており、僕たちが初めて降り立ったときは独特の森の香りがしました。 また、スロベニア人は、考えていた以上に知的だと思います。 街の壁に多くの落書きがありましたが随所に等式や幾何の図が見られ、特に今年のIMOの問題の1番を解こうとしている落書きには、驚かされました。 それだけではなく観光地で売られている「単振動ウサギ」や通貨のお札に印刷されている楽譜や幾何の図もスロベニア人の知性を感じさせるものでした。
 宿舎には、グランド、パソコン、卓球場などあり設備が充実していました。 僕たちはサッカーやカードゲームなどで外国の選手と交流しました。 閉会式後のパーティーでベルギーの選手たちにボードゲーム「共円」を教えました。 最初、彼らが三重人(TK君)とゲームをしている様子を見ていて「このゲームについていけるだろうか」と思いましたが20分後には見事に魅力に取り付かれている姿が印象的でした。 試験の結果にかかわらず充実したIMOでした。ぜひ来年も参加したいと思います。

越川 皓永
 成田からパリで乗り継ぎリュブリャナへ計15時間の長旅の末スロベニアへ到着。 日本と似ているところも多く過ごしやすかったが宿舎は収容所のようでクーラーも無くなかなかきつかった。 スロベニアにはUNOに似たENKAというゲームがあり、UNOと違う面白さがあり、楽しかった。 イタリア代表とENKAで対戦した。
 コンテストは、色々ミスが重なり想定外の点数となってしまった。 日本が7位だったのでよかったです。期間中は結構サッカーをやった。 スポーツ大会では初戦PKでアイルランドに負けてしまったが真夜中にテニスボールでサッカーをやった。 サッカーは交流の場としてよかった。
 国際交流はそこそこ通訳が頑張っていた。主にカードゲームで楽しんだ。 お土産も結構もらってメアドも教えたりした。
 今回初めてIMOに参加して、IMO独特の雰囲気は映像を見たり話を聞いたりするのでは分からない、 体験して初めて分かると感じた。 IMOは1回では楽しみきれず何回も行けばもっと楽しめると思う。来年もぜひ代表になって、IMOライフを満喫したい。


◆団長達の声

団長  尾高  悠志
 スロベニアは旧ユーゴへの印象を全く感じさせずとても平和で美しかった。 最初に連れて行かれた港町ポートローズはアドリア海に面している。 にぎ合う海辺では奔放に人が下着や裸でいる。 夜3時半過ぎまで大音量で老若男女が仲良く踊っていた。 僕は、気付かず忘れ物をして探すのを積極的に手伝ってくれたスロベニアの年の近いスタッフと仲良くなった。 カティヤはスロベニアで数少ない囲碁を打つ女の子だった。国代表を目指している。大分教えた。 スロベニア最強の棋士との対戦、中規模IMO囲碁イベントも実現した。 多くの人と交流できたが、最も嬉しかったのは僕がアメリカで金を取ってはしゃいでいたときからの友人、 韓国のスンさんとの再会だった。今回のIMOは厳密表記を必要とする採点基準への不平があった。 難しい問題だ。選手たちはよくやった。tos(片岡)は数学的実質は金だったと記しておこう。
 日本の数オリの未来はどんどんよくなって欲しい。多くの人の注目と協力と支援が必要である。 歴史が示すようにこの大会は数学界の大きな宝、引継ぎをしているOBを代表して宜しくお願いします。 最後のJuryMeetingはこの祭りをめちゃめちゃ愛する人の熱気ですごかった。 この宝を胸に新しく数学界で一歩を踏み出す。

オブザーバー  鈴木 晋一
 今回、初めて団長団に同行し、初めて東ヨーロッパに足を踏み入れてきました。 パリから久し振りに小さなジェット機でBrnik国際空港に夜10時過ぎに到着、 この前後に到着する他国の団長達を合わせて、11時半頃バスで空港発、 近くの主都Ljubljanaに向かっていると思いきや、午前2時頃ホテル前で降ろされたが「ここはどこでしょう」という状態でチェック・イン。 朝になってからアドリア海沿岸のリゾート地Portorozであることが判明。 結局ほとんどをこの地のCongress Center付きのホテルですごしました。 忙しいわけではないが暇でもないという、大人だけの毎日でした。 1日目の試験が終わった段階で、もしやベスト5入りかも・・・・という状態で少々興奮もしましたが、 順当に7位、選手団に拍手、四国と同じぐらいの国土に200万という人口の小国の、国を挙げての大会進行に感謝。



◆国際順位 (参加国90カ国、498名)
順位
中国
ロシア
韓国
ドイツ
アメリカ
ルーマニア
日本
イラン
モルドバ
10 台湾
11 ポーランド
12 イタリア
13 ベトナム
14 香港
15 カナダ

開催国の Web Site は、下記の通りです。

http://imo2006.dmfa.si/index.html


◆参加者の写真


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開会式での日本選手
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左から、越川、伊藤、渡部、
大橋、吉田、片岡の各選手

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役員・選手 集合