数学オリンピック財団 公益財団法人  数学オリンピック財団

理事長ご挨拶

数学と数学オリンピックについて

  


公益財団法人 数学オリンピック財団 
理事長 前田吉昭 
(慶應義塾大学名誉教授) 

1 数学の社会における役割

 数学は、私たちに驚きと喜びをもたらす素晴らしい学問です。数学の美しさを感じる例は世の中に沢山あります。数学は学問のなかでは女王と呼ばれる学問です。いろいろな場面で、数学の魅力を感じることがあると思います。例えば、フィボナッチ数列のように、その規則性や美しさに魅了されるものや、円周率や黄金比などの数学的定数は、数学の奥深さと美しさを象徴しています。数学は論理的思考や創造性を養うだけでなく、私たちの世界を理解するための重要なツールでもあります。
 数学は現在、社会において様々な分野で重要な役割を果たしています。現在の社会で重要となってきているAIやデータサイエンスなどの発展には数学が大きな貢献をしています。経済学やビジネス分野では、数学を用いてデータ分析や予測モデルの構築を行い、効率的な意思決定に役立っています。医学や生物学分野では、数学を用いて疾患の予測や治療法の最適化、遺伝子解析などの研究が進められています。数学の魅力は、その普遍性と応用範囲の広さにあります。数学は自然界の法則を理解し、複雑な問題を解決するための基礎となる学問であり、私たちの生活や社会に欠かせない存在です。数学は論理的思考力や問題解決力を養うだけでなく、創造性を発揮する場でもあります。
 数学は未知の世界への扉を開き、新しい発見や発想を生み出すことができます。数学の魅力に触れることで自分の能力や知識の幅を広げることができます。数学の魅力を感じ、その力を社会に活かすことで、より持続可能な未来を築くことができるでしょう。数学は私たちの生活を豊かにしてくれる大事な学問です。数学は難しいと感じることもあるかもしれませんが、その難しさを克服する過程で成長し、自信をつけることができます。難しい問題への挑戦を楽しむことができる学問であり、間違いを恐れずに試行錯誤することで新しい発見や理解を得ることができます。また、数学は世界中で共通の言語であり、国境や文化を超えてつながりを持つことができる素晴らしい学問です。数学の美しさを感じ学び続けることで自分の可能性を広げ、未来へ貢献します。

2 国際数学オリンピックと数学オリンピック財団

 国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad:IMO)は、大学教育を受けていない20才未満の学生(つまり、ほとんど高校生、一部は中学生、小学生)が参加できる数学のコンテストです。第1回国際数学オリンピックは、1959年東欧7カ国の52人が参加してルーマニアで開かれましたが、その後西側諸国も参加し、世界の多くの国が数学オリンピックに参加するようになりました。
 日本は先進国のなかでは参加が一番遅れてしまいましたが、1990年の中国大会からIMOに参加しています。その年は数学オリンピック日本委員会(The Japanese Committee for International Mathematical Olympiad:JCIMO)を作り、日本で数学オリンピックを行い、派遣する選手を選びました。しかし、日本が毎年IMOに参加できる様にするため、中国大会の後に川井三郎氏・藤田宏氏・野口廣氏などが中心となり数学オリンピック財団(The Mathematical Olympiad Foundation of Japan)を作り、JCIMOを数学オリンピック財団の委員会とし、数学オリンピックを財団が主催する日本数学オリンピック(Japan Mathematical Olympiad:JMO)として立ち上げ直しました。
 2003年には、国際数学オリンピックを日本で初開催いたしました。2023年には、20年ぶりに日本で、国際数学オリンピック日本大会を開催いたしました。これには、112カ国の618人が参加し、数学オリンピック国際大会開催の中でも最大の大会となりました。この日本大会は、多くの企業にスポンサーとなっていただき、また一般の方にもご支援をいただき、大変な盛り上がりのある大会となりました。
 数学オリンピックは、単なる数学のコンテストではなく、学びと成長の場でもあります。コンテストを通じて新たな問題に挑戦し、自らの限界を超える経験を積むことができます。そして他の参加者との交流を通じて、異なる視点やアイデアを得ることができます。
 数学オリンピックは、数学の楽しさと挑戦を体験できる素晴らしい機会です。参加することで、自分の数学の知識や能力を試し、向上させることができます。数学オリンピックは国際的な舞台で行われます。世界中の数学を愛する若者たちと交流する機会も得られます。数学オリンピックに参加することで、自分の可能性を広げ、新たな発見や成長を経験することができるでしょう。数学の楽しさを共有し、数学オリンピックに挑戦してみてください。きっと素晴らしい経験が待っています。

3 ご協力のお願い

 数学オリンピック財団は2013年4月1日からは、新しい公益法人制度が施行されたことを受け、公益財団法人となりました。
 数学オリンピック財団では、次の事業を行っています。

1. 日本数学オリンピック(JMO)の開催
2. 日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)の開催
3. 国際数学オリンピック(IMO)への日本選手団の派遣
4. アジア太平洋数学オリンピック(APMO)への参加
5. ヨーロッパ女子数学オリンピック(EGMO)への日本選手団の派遣
6. 数学オリンピックに関する教材の開発など
7. 数学、特に数学オリンピックに必要な知識の普及活動

 数学オリンピック財団は、数学教育の発展と才能の発掘を支援する使命を持ち、その目標達成に向けて、数学を愛する方々、数学オリンピックに参加する生徒の皆様やその保護者の方々、ご支援をいただく企業や団体など、多くの皆様とともに歩んでいきたいと思います。そして、数学の普及と才能の育成に全力を注いでまいります。数学の輝かしい未来をご一緒に築いていけることを楽しみにしています。
 数学オリンピック財団は、数学の素晴らしさを共有し、若者たちの可能性を広げ、さらなる成長と発展に努めてまいります。これまでの皆様のご協力に心から感謝申し上げるとともに、今後ともご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。